消化器がん

Digestive cancer

がん

日本のがんによる死亡者数は年間30万人を超え、死亡原因の第1位を占めるようになりました。しかし診断と治療の進歩により、一部のがんでは早期発見、そして早期治療が可能となってきました。がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことでがんによる死亡を減少させることです。

食道がん

日本では、食道がんの90%以上が扁平上皮癌というがんですが、欧米では腺癌というがんが増加しており、そのほとんどは胃の近くの食道下部に発生します。日本でも、生活習慣の欧米化によって、今後、腺癌が増えることが予想されます。女性よりも男性に多いがんです。発生の危険因子としては、喫煙や大量の飲酒が明らかになっています。初期症状がないことが多く、検診や人間ドックのときに発見されることが20%近くあります。5年生存率でみると、ごく早期であるステージ0期では100%、I期で86%です。Ⅱ期になると51.9%、Ⅲ期で26.4%、Ⅳ期で12.2%と、生存率は徐々に低くなっていきます。内視鏡検査にて早期発見をすれば、内視鏡治療ができ、治癒することも望めるようになってきました。

胃がん

胃がんにかかる人は40歳以降に顕著となりますが、かかる数は高齢化のために全体数は横ばいですが、一昔前の同年代の人々に比べると、男女とも大きく減ってきています。胃がんで亡くなった人の数も統計的にみると死亡率は減少してきています。

診断や治療の進歩により、胃がんは治りやすいがんの1つといわれるようになってきました。胃がんの治療は、胃がんの大きさや広がりなどによって細かく決められていますが、進行した状況で発見された場合は、治療が難しいこともあります。5年生存率で、ステージⅠ期では96.7%、Ⅱ期64.1%、Ⅲ期47.0、Ⅳ期7.0%となっており、全症例では73.4%です。

胃がんの原因については多くの研究がなされて、特に強いリスク要因として挙がっているのが、ヘリコバクター・ピロリ菌への感染で、約30倍リスクが高くなるとの報告もあります。ピロリ菌の感染が長期にわたって持続すると慢性炎症と委縮が起こり、がんに成り易い状態になります。検診にて、「ヘリコバクター・ピロリ抗体検査」や「ペプシノゲン検査」、さらに胃カメラにて、早期に発見できれば、治りやすいがんの1つといわれるようになるでしょう。

大腸がん

2016年のがん情報サービスによる死亡者の順位では、男性は第3位、女性は第1位で、今後も死亡者数は増加しています。

大腸がんは、結腸・直腸・肛門で構成される長さ約2mほどの大腸に発生するがんです。日本人において発症が多い部位は、S状結腸・直腸で、大腸がんの全体の7割を占めています。大腸粘膜の細胞からポリープ(腺腫)と呼ばれる良性の腫瘍が発生し、その一部ががん化して増大したものです。大腸がんは早期の場合、自覚症状がほとんど見られないのが特徴です。たまたま受けた大腸の検査で発見されることがほとんどです。排便異常(便が出にくい、下痢と便秘を繰り返すなど)や腹痛、下血などの自覚症状がみられる場合は、進行大腸がんであることが多くなります。症状がみられない早期の大腸がんは、性質も比較的に大人しく治る可能性が高いがんであるといわれており、適切な治療を早くから受けるためにも、定期的に検査を行うことが大切です。

また、親子や兄弟など血縁者の中に大腸ポリープまたは大腸がんの人がいる場合には、定期的に検査を受けることが推奨されています。大腸がんの原因の一つには、頻度は少ないですが遺伝も関連があるといわれており、「リンチ症候群」「家族性大腸線種症」があります。

大腸がんの原因には、食生活が密接に関係しているといわれています。大腸がんのリスクを高める食物としては、動物性の高脂肪・高たんぱくに偏った食事、繊維食の不足などがありますが。大腸がん検診は、男性女性ともに、40歳を過ぎたら毎年受けることが推奨されています。

大腸がんは、進行すると様々な症状が見られるようになりますが、ごく早期のうちに適切な治療を受ければ、完治が望めるがんです。ごく小さながんであれば、内視鏡で切除することもできます(EMR・ESD)。早期発見・早期治療のためにも、毎年の健康診断と一緒に、大腸がん検診も受けておきましょう。

もしも進行した状態で発見されたとしても、適切な外科治療を行うことで、治る可能性の見込めるがん(5年生存率で、ステージⅠ期では95%、Ⅱ期90%、Ⅲ期80%、Ⅳ期35%)なので、専門病院と連携し、適切な治療を提供します。